賃貸物件では、退去後の原状回復や設備交換、外壁塗装など、さまざまな工事費が発生します。ただし、支払った金額をすべてその年の経費にできるとは限りません。

工事費は、内容に応じて「修繕費」または「資本的支出」として処理します。修繕費とは、壊れた設備を元の状態に戻すなど、通常の維持管理や原状回復のための支出です。原則として、工事を行った年の必要経費(法人の場合は損金)に算入できます。
一方、建物の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりする工事は、資本的支出に該当する可能性があります。例えば、従来より高性能な設備への交換、間取り変更を伴う大規模リフォーム、建物の用途変更などです。この場合、支出額を一度に経費計上するのではなく、建物や設備の取得価額に加算し、耐用年数に応じて減価償却します。
なお、資本的支出は、既存の資産の取得価額に合算して償却する方法のほか、新たな資産として区分して償却する方法が認められる場合もあります。処理方法によって各年の減価償却費や税額が変わるため、確認が必要です。
■判断に迷う場合に使える「形式基準」
実際の工事は、修繕費的な性質と資本的支出的な性質が混在していることが多く、実質的な判定だけでは処理に迷うケースも少なくありません。そのため、次のような形式的な基準により、修繕費として処理できる場合があります。
・1つの修理・改良等の金額が20万円未満であるもの
・おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良等であるもの
また、修繕費か資本的支出かが明らかでない場合には、支出金額が60万円未満、またはその資産の前期末取得価額のおおむね10%以下であることなどを基準に、修繕費として処理できる場合があります。
■証憑書類の保存が重要
修繕費として処理できれば当年の所得を圧縮できますが、工事名や金額だけで判断することはできません。見積書、請求書、施工内容が分かる資料を保存し、工事の目的と内容を明確にしておくことが重要です。賃貸経営では、工事を実施する前に税務上の処理も確認し、納税額と資金繰りを含めた修繕計画を立てましょう。個々の工事が修繕費・資本的支出のいずれに該当するかは、工事内容や資産の状況によって異なります。実際の処理にあたっては、顧問税理士などの専門家へご確認ください。